|砂に咲く花|
昔、カランシーヤは逃げ出した
すべてを放り出した
その中にはずっと味方でいてくれた子がいたけれど
二度と帰ることはなかった
伝える術がなかったから
「カランシーヤはどうしたのかな」と思わなくなるまで毎日ずっと裏切り続けたのと同じこと
最後に会った時あの子は困った顔で座っていた
しばらく隠れては逃げてふらふらしていたカランシーヤをイルヨシュが助けた
その頃にはあの子はすでに息を引き取っていた
どれだけ時が経ってもかつてのあの子に許しを願ってはいけない
自分が逃げたあとどんな酷い暮らしだったか推し測っても
いつ亡くなったかさえ知らない
なにもできなかったんだから
償っていたい終わらないでほしい
カランシーヤは分かっている
謝るのは自分のため
許されたくない、罰を受け続けたい
それもまた自分のため
報いを受けろなんて思う子じゃない
本当にあの子のためになることは何
考え続けることが償いなのだろうか
いまでもカランシーヤは答えを見つけられていない
イルヨシュは真摯に背中を押した
そんなことはない君の中に答えは出ている、前を向いて考えられる
1枚だけ手元に残った写真を探す勇気を出せる
あの子を犠牲にして助かった、あの子にもらった人生をきちんと生きることだ
カランシーヤがイルヨシュを愛せるのは
あの子が愛情を教えたから
奪ったものではなく受け取ったものを全て思い出すことが償いになるんだろうか
暴力の渦のなかであの子だけがくれた惜しみない優しさを覚えているはず
見返りを求めない愛情をいま大事に思っている相手へ繋ぐ
カランシーヤの記憶の中であの子がちらりと微笑んだ