|光合成|
曇っていて風の強い日だった
空を羽ばたくには翼が左右非対称で
地を駆けるには靴がちぐはぐで
倒木を這って越えていくんだとしても
悔いを埋めながら歩く不恰好を許せたらいいのか
エユルは彷徨っている
氷河期に海が低くなり海岸線が変わったことで
森のまんなかに取り残された少しのマングローブと話してみたら
あるいは遠くまで行けるなら空気中の水分を吸収できる根っこの木がある
またはふかふかの樹皮のケニュアルがある
葉っぱに頼らず幹で光合成できる者がいる
もっと遠くでいいなら葉緑体を取り込むウミウシについて
そしてもし絶叫する60度を耐えるちからがあるなら
南極の湖底の円錐のなかにシアノバクテリアがいると教えてもらった
ハメリンプールだってもちろんいいよね
だから全部巡ることにしたけれどエユルはいまだに彷徨っている
光合成ができたならどんなにか
持っているものをぽたぽた落として歩く
グヴズルンとイートリが拾ってあげても
エユルはふたりが見えない
眩暈に包まれてひとりごとを言うしかできない
エユルがてのひらを差し出したらそのひとは
見事なキリンの形に切り取って余った分を捨ててしまった
小さなキリンはのしのし去った
エユルは慌てた
その捨てた方に彼女の翻訳機能があった
自分が悪かったのかなと思ってしまう
そんなことはない、ちょっと会話がすれ違っただけ、そんなに思い詰めないで
グヴズルンとイートリが顔を見合わせて祈っている
エユルは自力でまた歩き出した
落としたものを拾い集める
「大丈夫じゃなくてもできることをやる」
そう思えるように何度だって
でも終わりがない
欠けていることはわかるけれど
なにをどうしたら足りるのかわからない
エユルが転んで手をつくと
倒木の上のルリホコリが首を傾げた
困っているの?小さな魔法をかけてあげるね
エユルはグヴズルンと話せるようになった
「できることを全部全力でやろうとしなくていいんだよ」
グヴズルンが宥めた
「本当に?だって人の3倍努力しなさいと言われたよ」
エユルはまだ自分を信じられない
「努力でどうにかなりそうだと思えるの?諦めていい手放していい」
イートリが心配している
グヴズルンが説得を続ける
「光合成しない植物もいる、エユルが大事にしたいことは何?」
「考えてみる」
できなくても大丈夫と
そのままを受け入れられるだろうか