|呪いの解除|
その娘は呪いの村で育った
村の外には滅多に出ないが、大きな街へ行ったときに
保護者は言い聞かせた
他人は敵、村人以外はすれ違いざまに呪って歩きなさい
呪い返しから身を守るための珠を片時も離さず持っていなければいけなかった
娘が成人する頃に、途方もない呪い返しを防ぎきれず村は壊滅した
守りの珠も砕け散った
大都会の片隅で娘は途方に暮れた
わたしは間違ったことを教わったのでは
お酒一杯つきあわない?
一見ひとなつこい彼女は街角で暇そうにしていた娘を屋根の下へ誘った
それからふたりはいろんな話をたくさんして
ゆっくりほどけていった
なんとしてもこのひとをわたしから守らなければ
娘は危機感を抱いた
呪い返しは本人に返ってくるとは限らない
他人を呪わないこと
今日1日の運がいいか悪いかだけを占う珠があって
ほぼ当たる
嫌なことが多い日だとあらかじめわかっているから
心構えできる
あなたは大丈夫、ひとを呪わなくても生きていける
悪しき習慣を断ち切れる
彼女はにっこり笑ったので
娘もできる気がした
慣れてくればやりすごせる
値踏みされぶつかられ怒鳴られても
腹を立てるだけで思いとどまるように
とっさに呪詛を吐かないように
かみさまも空もおひさまも信じていないので
誰に誓ったらいいかわからないけど
絶対彼女を危険な目に遭わせない