北の光を辿る犬


|息を継ぐ|
滝の上空に踊るオーロラボレアリス
渦を巻いてひらひら舞って
今夜は太陽風のご機嫌がいい
積もった雪で遊んでいると月が昇ってきた
神様の滝に月虹がかかる

エユルはからだいっぱいに記憶する
新雪をさくさく踏んで歩く
雪を丸めた手が一度冷えてあとから燃えるように感じる
舞う雪の鋭い白と雲のずっしりした白に心躍る
氷上を渡る風の響きに足取りは軽く歌がこぼれる

空の宴が終わったら川辺を下る
橋を渡って森に足を踏み入れる
雪の小道から見上げると天の川が流れている
氷点下は楽しいけれどそろそろ部屋に帰ろう

気流の小さな渦を操って音を消す構造の羽毛
夢見心地で想像する
そんな翼で飛べたなら

オーロラオーストラリスに憧れる
吹雪と氷の大陸の
夜空いっぱいに揺らめく光
今頃向こうは白夜から移り変わる

オキアミを追い詰める鯨たちのバブルネットフィーディング
もし遠い海に潜れるちからがあったなら
冷たい深淵に溶けられたなら

心地よい夢を抱きしめて
けれどエユルは埃舞う、汚れた水の匂いがする道をいく
これで何度目になるのか、打ちのめされると知っている
希望と期待はぼこぼこにへし折られる
それでもどうしてもあきらめたくない
生きることはたたかうことだ
諦めたらいつかのあちらのエユルが死ぬ
生きていける世界になれとこちらのエユルは願っている