北の光を辿る犬


|かげぼうしの模様|
ユシュリのかげぼうしにはシミがあって
そいつは雲立涌を気取っているが
モンシロチョウを見つけると
追いかけ回そうとして意地悪になる

スイトが丁寧に紐解いた
どうしてそんなふうになるのか
分かったことは
ユシュリが自分で選んだ模様じゃないこと
昔、誰かがかげぼうしにつけただけのシミ
それが判明するやいなやシミは一目散に逃げていった
ユシュリは反省した
出所の不明な模様を住まわすなんて詰めが甘い

ユシュリはため息をついた
「ありがとう。おかげで助かったよ」
スイトはけろっとして腕まくりした
「なんでもないよ。ほら朝ごはんにしよう」
ユシュリの困りごとを解決するのに手を貸すのは
スイトにとって少しも迷惑ではない

あっちとこっちで似た歯車が動いている
汲み上げている水を遡ると同じものが見えてくる
どうしたらこちらまで澄んだ飲み水を確保できるか
順番なんてないのが理想だけれどまずは他の周縁に水を配らなければ成し得ない
スイトはそういうことを考えている

ユシュリだって見渡すように考えたい
けれどかげぼうしに振り回される
もっと深く編み込まれてしまった模様は
簡単に消え去らない
ほどいて捨ててもまた欠片から再生する
モンシロチョウやクロアゲハを追いかけ回すなんてしたくないから
自分の言動を注意深く見張る
スイトは偉いねと褒めてくれるけれど
喜ぶ余裕はない

刷り込まれた習慣より自分の意志を信じたい
スイトにふさわしい自分でいたい
背筋を伸ばして微笑めるように